「かくしん」市政報告 2024年2月22日 発行:日本共産党東大阪市議会議員団
(2024.3.23追記) 速報:東大阪市水道の府企業団への譲り渡し(広域化) 市議会で否決 もご参照ください。(追記終)
1月の能登半島地震のように、震災時には水の確保が困難で苦労しています。
何回トラフ地震が必ず来るという時に、東大阪市はこの2024年3月議会で水道を手放し、大阪広域水道企業団への移行を決定しようとしています。
私たちは、企業団への統合(広域化)に懸念点があることをみなさんにお知らせします。昨年、企業団統合が否決された和泉市でも、同様の懸念点が指摘されています。
memo 水道広域化って?
「安全・安心な水道水を安定的にお届けするため、府域の水道事業の効率化や運営基盤の強化につながる『広域化』を進める」と大阪広域水道企業団は言っています。
大阪では大阪府域全体で一つの水道事業に統合することを目標に広域化が進められ、現在13自治体が事業統合されています。
memo 大阪広域水道企業団とは?
大阪市を除く府内42市町村で構成される一部事務組合です。
淀川などの河川から取水して、浄水場で水を製造しています。そして、各市町村に水を卸したり、直接家庭に生活用水を配水したり、府内の企業に工業用水を配水したりしています。
水道広域化 東大阪市が説明するメリットを検証
検証1「補助金105億円のため」
市の説明は「施設の統廃合や更新に国や府から補助金があり、105億5千万円の財政効果」
しかし! 200億円の資産手放す
財政効果は40年ほど先の試算で信憑性が薄く、誰も責任が持てません。
現在、市水道局の持つ総資産は、借金を引いても200億円を超えています。
105.5億円の財政効果があるからと言って、200億円もの資産を手放す経営者がいるでしょうか?
検証2「技術職員継承のため」
市の説明は「技術職員継承のため」
「広域化により技術継承問題は解消→経験のある職員を各部署に配置し、技術継承ができる」
「業務の効率化→総務系業務を集約し、効率的な人員配置」
「総合水道料金(どの市町村でも同じ水道料金)に切り替え、利便性や危機管理対策の向上、経費節減ができる」
しかし! 技術職員継承は統合の根拠にならない
人口が10万人以下の市の技術職員は10名前後が多く、継承に課題があります。
しかし、東大阪市の技術職員は89人で、府下でも大阪市、堺市、吹田市に次いで多く、比較的多数を維持しています。厳しいとはいえ統合する根拠にはなりません。
また企業団は、広域化後も業務の効率化と称して職員数をスリム化する方針を持っており、矛盾しています。
現場を知る職員の必要性
- 濁水や水圧低下を起こさせない、バルブの回し方
- 漏水を音で判別する耳
- 水の匂いや濁り具合
など「暗黙知」という、経験の中で得た高度な技術と知識が水道の技術職員には 必要です。これは、研修やマニュアルでは引き継げません。
検証3「非常時対応のため」
市の説明は「非常時対応が充実→大規模漏水時、本部は連絡調整を担当し、現場の職員は復旧に力を注げるので、組織的応援が可能」
しかし!災害時の即時対応が困難に
現在は、市の災害対策本部に市の上下水道局が入っています。
しかし、企業団になると、東大阪市から見れば外部になるので災害対策本部には入らず、関西電力や大阪ガス等と同じで、市で決めた対策を相談したり要請したりする対象になります。
また、タンカーが衝突して水道管が破損した山口県周防大島町では、独自の水源を廃止し広域事業団に依存していたことが長期の断水を招きました。
能登半島地震から学ぶなら…
能登半島地震で水道の復旧が遅れた原因として、水道管の耐震化の遅れが指摘されています。
広域化すると、水道管の早期の耐震化や、水道料金の決定などの重要な問題が、市では決められなくなります。
検証4「施設統廃合で効果」
市の説明は「施設統廃合に伴い『土地の利活用』ができる」
しかし!かえって不合理なものとなる懸念
施設の統合で合理的に使える場合も一部にありますが、地元の自然な水源の活用よりも、遠方の水源や大型ダムの利用を優先するなど、かえって不合理なものとなる懸念があります。
八尾市と一部施設を共同で使うことが検討されていますが、それなら二市で相談すれば済むことで、府企業団に統合しなくてもできます。
検証5「水道料金値上げ抑制になる」
市の説明は「2060年度まで水道料金単価を9円/㎥抑制できる」
しかし!大きな自治体にはメリットが薄い。水道料金はかえって値上げ
広域化して、将来的に各市町村が同じ料金にすることが検討されています。ならば、2060年までの料金をシミュレーションしても意味がありません。
仮に統一料金が府下平均になれば、広域化による抑制効果9円(1㎥当り)も消えて、統一料金でかえって値上げとなる可能性が高くなります。
ほかにも疑問がいっぱい
Q 市民の声が届きにくくなるって、どういうこと?
a 大阪広域水道企業団議会に市民の代表を一人も送れない場合も
水道料金や水道管の更新などを議論する企業団議会に参加できる議員は、基本的に東大阪市から1名。しかし、代表を送れない場合もあります。
これでは市民の声は通りません。
Q 収支や職員の技術継承が厳しくなった原因は?
a 無駄なダムや職員採用の計画性に問題があります
これまで、無駄なダムなど過度な施設で、水余りと財政負担を作ってきたため、その返済が水道企業会計に重くのしかかっています。
また、職員の技術継承が困難になったのは、大量退職者がいる時期に、新規の技術職員を計画的に採用してこなかったのが原因です。
Q 他の自治体ではどんな対応?
a 人口の多い大阪市や堺市は参加していません
東大阪市は大阪市、堺市に次いで3番目の大きさです。上の2団体が広域化に参加しないのはなぜでしょうか?
大阪府と府内全水道事業者がまとめた『府域一水道に向けたのあり方に関する検討報告書』では、人口規模の大きい団体は広域化の必要性を見出しにくいことが指摘されています。
同報告書より抜粋:
東大阪市が率先して広域化に参加するメリットはありません。
Q ズバリ! 広域化のねらいは?
a そもそも水道の広域化の狙いは、いったん広域化して民間事業者が参入しやすい組織にするためです
水道広域化の次は 民営化で市民に大きな損害のおそれ
市水道局は、民営化については「注視する」と言うだけで、否定していません。
なぜ水道民営化か
ヨーロッパでは過去、水道事業の広域化が進められ、その後に民営化されていきました。しかし、企業の業務内容とお金の流れが不透明などの理由で、再度公営化が流れとなっています。
そのためヨーロッパで仕事を失った水メジャー(水道業務全般をになう世界的民間企業)が、日本を新たな市場として狙っています。
日本政府は、水メジャー・財界などの意向を受けて、民営化と、その下準備としての広域化を促進する水道法改正を行いました。
民営化が可能に
先に書いた水道法改正により、水道管や施設の所有権は地方公共団体のままで、その運営を民間事業者ができるようになりました。
民営化の問題点
問題点1 不当な水道料金値上げのおそれ
今は水道料金は水道事業だけに使われます。
しかし、民営化すると、その企業が払う役員報酬、株主配当、税金などにも使われ、コストが高くなります。
さらに、企業が情報を開示せず、お金の動きが市民にわからなくなり、不当な水道料金を押しつけられる危険があります。
問題点2 職員の質が低下するおそれ
民間企業は利益を上げることが使命です。利益を上げるためには、水道料金の値上げか、人件費の抑制などしか方法がありません。
人件費が抑えられたら、質の低下に直結します。
問題点3 災害時の対応が困難に
地震、水害などの災害時にも、自治体は給水について最終責任を負うことになっています。
しかし、責任があっても、実際には水道施設の日常的な管理運営を民間に任せるので、ノウハウはなくなります。
地元企業や自治体で技術や経験を蓄積した専門職の確保が担保されず、災害時の対応に責任を持てなくなります。
問題点4 コスト優先で、地元の水道事業者に仕事は回らない
民営化をいち早く推進してきた浜松市では、運営会社が地元の企業に発注せず、自社の傘下・系列の事業者を使うことで、地域経済に悪影響があると懸念されています。
フランス・パリでは
○ 水道民営化で値上げ
1980年代に水道民営化を実施。
しかし、3ヶ月に1度の値上げがあり、結果、25年間で2倍に料金がはね上がり、2010年に再び公営に戻っています。
↓
○ 民間企業の公表値がでたらめ
民営化後、水道をになっていた民間企業が公表したデータもでたらめで、実際の利益は公表値の2~3倍もあったことが、再公営化後に判明しています。
↓
○ 公営に戻して水道料金値下げ
再公営化して、組織の最適化を実施したり、株主配当・役員報酬の支払いが不要になったりしたことなどにより、経営を健全化し、水道料金を8%も値下げしています。
(参考)「水道 再公営化で値下げ 日本でパリ市の公社部長講演」しんぶん赤旗 2018.9.22
これだけ問題点があるのに、市民に情報が周知されていません。
急いで決める必要があるでしょうか?
市民に情報を提供し、市民の意見をしっかりふまえ、慎重に審議すべきです。
市民のみなさんのご意見をお寄せ下さい
連絡先 日本共産党東大阪市会議員団(議員団ホームページが開きます)
資料
『府域一水道に向けたのあり方に関する検討報告書』(PDF 約1.5MB)
出典(大阪府ホームページ)(PDFファイルの内容は上記と同一)
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「水道 再公営化で値下げ 日本でパリ市の公社部長講演」しんぶん赤旗 2018.9.22
水道広域化についての日本共産党東大阪市会議員団の代表質問(2024.3.7) (X(旧Twitter)への投稿)